蜂蜜蜂蜜(はちみつ)とはミツバチが花から集めた蜜を主原料に作り出し、巣の中に貯蔵する天然の甘味料である。
概要
ミツバチは花から得た蜜を体内で転化酵素(インベルターゼ)を加えて分解し巣に蓄える。そのため、巣にあるうちにスクロースを中心とした花の蜜から成分が変化してゆく。ミツバチの巣はハチの代謝熱によって常に35℃前後に保たれ、なおかつ働き蜂の送風行動によって常に換気されているため水分が蒸発し糖分が80%ほどになる。成分としてブドウ糖、果糖のほか各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸を含んでいる。高い栄養価をもち、1kgあたり2940kcalの熱量がある。
蜂蜜は糖の過飽和溶液であり、低温で結晶化する。この結晶化したほうがブドウ糖で、結晶化しない蜜の部分には果糖が多く含まれている。冷蔵庫はもちろん、冬期には室内でも固まってしまうことがある。湯煎をするなど温めれば元の液状になり、品質上は全く問題はない。花粉などの不純物が多いと、結晶しやすくなる。「低温で固まれば純粋蜂蜜で固まらなければ加糖蜂蜜」といわれることがあるが、純粋ハチミツでも不純物を濾過しているものは結晶しにくいため、この方法で見分けることはできない。
蜂蜜は保存性に優れている。エジプトでピラミッドの発掘をしていた米国の考古学者T.M.デービスが約3300年前の蜂蜜の入った瓶を発見。その蜂蜜は全く変質していなかったと記録されている。
蜂蜜中にはボツリヌス菌の胞子(芽胞)が含まれていることがある。蜂蜜中でボツリヌス菌が繁殖して毒素を作ることはなく、また通常、蜂蜜中のボツリヌス菌は消化管内で胃酸により殺菌されたり腸内細菌叢により繁殖を阻まれるため、危険性はほとんどないとされているが、消化器官・腸内細菌叢が未発達な乳児の場合、腸管までボツリヌス菌が届いてしまうことがあることから一歳未満の乳児には与えてはいけない(芽胞は高温に耐えるので、オートクレーブの様な高温高圧の滅菌処理でないと芽胞の除去は困難であるが、蜂蜜にこの処理を行うと変質の恐れがある
特定の植物へのアレルギーがある場合は、採取した植物が判明している商品の利用が望ましい。
また、蜂蜜はショ糖よりも体に吸収されやすい。これは、蜂蜜は単糖類のグルコースとフルクトースから構成され、これ以上消化をされる必要がないからである。
日本では養蜂家が小規模なことや養蜂に適した環境が少ないこともあり、国産蜂蜜は輸入品にくらべ一般に高価である。輸入品に比べ品質が高く安全と思われているが、実際には国産品から検出されてはいけないとされる抗生物質が検出されるなど、必ずしも外国産と比べ安全とは言いきれない。2005年時点の1kg当り小売価格は、国産蜂蜜が4,000?6,000円。一方、中国からの輸入品は2,000円前後で販売されている。
蜂蜜の利用
もっとも日常的に親しまれる利用法は食用である。パンやホットケーキに塗って食べるほかリコッタなどの軽いチーズあるいはヨーグルトなどの乳製品に添えることがある。
コーヒーや紅茶等の飲み物に砂糖の替わりに甘味料として用いる。蜂蜜の主成分である果糖は低温では甘味を感じやすいが、高温では感じにくくなる。暖かい飲み物に蜂蜜を使う場合は、量が多くなりがちなので注意が必要である。
紅茶にハチミツを入れると黒く変色してしまう。これは、紅茶に含まれるタンニンと、ハチミツに含まれる鉄分が結合し、タンニン鉄が生成されるためである。
照焼き、煮物などで甘味とともに色ツヤを良くするためにも使われる。そのほか、保存性の高さを利用した蜂蜜漬けなどがある。
殺菌、消炎作用があり、創傷の際の消毒に使える他、医薬品として口内炎の治療などに使われる。日本薬局方に医薬品として記載されている。ただし安価な蜂蜜の中には砂糖水などで水増ししたもの(「純粋はちみつ」と銘打ってあるものの中にもこの手の粗悪なものが存在する)も多く、それらには上記の効果は薄いとされる。漢方薬では生薬の粉末を蜂蜜で練って丸剤(丸薬)をつくる。八味丸(別名:八味地黄丸、桂茯腎気丸)や桂枝茯苓丸といった方剤がこの方法で造られる。また、甘草や黄耆などの生薬を蜂蜜とともに炒め、薬効を変化させることも行われている。
韓国では柚子を蜂蜜、砂糖と煮込んでマーマレード状にしたものに湯を注して飲む「ユジャ(柚子)茶」などの伝統茶があるほか、蜂蜜そのものを湯に溶かして「ボルクル(蜂蜜)茶」(「クル(蜜)茶」とも)と称して飲用する。また、水に溶いたものは「クル(蜜)ムル(水)」といい、特に酒類を飲みすぎた後に適した飲料だとされている。
適度な濃度に薄めたものを発酵させ、蜂蜜酒を作る。ヨーロッパやアメリカではハニーワインあるいはミードと呼ばれ、新婚家庭で新婦が作り、新郎に飲ませる習慣があった(ハネムーンの語源という)。エチオピアではテジといい、伝統的に作られている。因みにパン用のイーストなどをスターターとして、日本の家庭でも簡単に作ることができるが、当然酒税法違反となる。
蜂の巣からハチミツを搾り取った後に残る蜂の巣の主材を蜜蝋(みつろう)という。働き蜂は体内から蜜蝋を分泌し、巣作りをする。蝋燭、蝋型、塗料などの原料に利用される。
アフリカ中央部のコンゴ民主共和国北東部の熱帯雨林(イトゥリの森)に暮らすムブティ族(ピグミー)は、採取可能な季節に蜂蜜を主食としている。ムブティ族は小型の鹿などを長さ数百mの網で捕捉する狩猟民族である。しかし、5月から6月を中心にほぼ蜂蜜だけを摂る。